ドナルドの秘密。

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「こんなことがしたいんじゃないのに」  わたしが公園でハンバーガーを食べていると、ドナルドが話しかけてきた。化粧で作った笑顔を顔に貼っていた。わたしは、かじりついたハンバーガーを口からゆっくり離した。 「ほんとはこんなことがしたいんじゃないのに」 「え?」  するとドナルドはいきなりしゃがんで、砂をかき集め始めた。手袋がココア色になっていく。  わたしはどうして良いか分からず、ただそれを見つめていた。  ドナルドは一度わたしを見て、それから立ち上がった。手には砂が山盛り乗っている。  まさかわたしにかける気なのかな……。違うよね。  ドナルドはにっこり笑うと、ハンバーガーに砂をぶっかけたのだ。 「ちょっとなにするのよ! ねぇ!」  顔をあげるとそこにはもうドナルドがいなくて、遠くで子供たちが遊んでいるだけだった。 「なによ……もう」  マクドナルドに怒りをぶつけることなんてできないし(わたしはとびっきりの臆病なのだ。相手が悪くてもなかなか言えないほどに)、当の本人には逃げられてしまったし、諦めようと思った。仕方のないことだと思えば平気だ。  わたしは砂塗れのハンバーガーをゴミ箱に捨てた。そのとき感じたのはホームレスの殺気だけだった。  帰ろっと。
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