第一話 内気少女

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後部座席を振り返ると、カメラをはじめ色々な機材、スーツや毛布などが積み込まれていて、確かに狭い。 …毛布? 「リョウタさんって、車で生活しているんですか?」 すると彼は苦笑する。 「あぁ、毛布?寒い時に膝にかけたり、仮眠をとったりする時に便利なんだ。ちゃんと毎日家には帰ってるよ」 そして「一応営業職だから身だしなみは整えないとね」と笑った。 その会話をしているうちにも私がシートベルトを締めたのを確認し、車をバックさせる。 ステレオからは最近発売されたアーティストの曲。 「あ、この曲好き」 私が呟くと、前を向いたまま彼が微笑った。 「ホントに?俺もこの曲聴いて好きになったんだ。アルバム買った?」 私が首を振ると彼は「MD聴ける?」と。私が頷くと、また微笑う。 「じゃあ、今度録って渡すよ。俺買ったから」 その言葉が嬉しくて。 「ありがとうございます。嬉しいです」 素直に声に出して言うと、子供みたいな笑顔をする。 「なかなかそんな事言われないから照れるよ」 彼の新たな一面を見つけたのが嬉しくて、顔が自然と笑顔になる。
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