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振り向くと、若い男の人は笑顔を浮かべていた。
悪意がある訳では無い、自然な笑顔。
「君ってよくこのコンビニ来てるよね」
今時珍しく、短い黒髪の彼はゆっくりとこちらに歩いて来る。
私が不思議に思いつつ頷くとその人は私の前で止まる。
「何度か見掛けた事あるよ。俺もここの常連なんだ」
人懐っこい笑みを浮かべる彼は若いけれど、高校生ということはなさそうだから、私より4、5歳程上だろう。
右手を見ると、あ…、一緒。
手に握られているのはレモン味の炭酸ジュース。
彼も私の視線に気付いたらしい。
「これ、おいしいよね」
にこ、と笑われて、しどろもどろになりつつ答える。
「まだ…飲んだ事なくて。…おいしいんですか?」
尋ねると、ちょっと吹き出された。
「…ごめん、あまりにも警戒されてるみたいだから、つい…。ごめんね」
クスクス笑った後「俺もこれ、昨日初めて飲んだんだよね」と。
こんなに笑われても不快感を覚えないのは、彼の人柄と私の緊張のせいだろう。
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