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「ごめん、名前言ってなかったよね。俺リョウタ。地方情報誌の記者やってるんだ」
そう言って差し出されたのは、ちょっと派手な名刺。
「あ、これって…」
私が受け取った名刺を見て口を開くといたずらっぽく笑う彼。
「そう。プライベート用の名刺。ゲーセンで作ったんだ」
どおりで、見た事あると思った。
よく見ると、ケー番とメアドも書いてある。知り合ったばかりの人に、こんなに簡単に教えちゃって良いのかな?
「何か女子高生の間で流行ってる事とか、お勧めのお店とかあったら教えてよ」
あぁ、そういう事ね。
「ちなみに君って、そこの学園の子だよね」
そう言われて、私はまだ名前を言って無い事にやっと気付く。
「はい、高等部1年です。ユリって言います」
軽く頭を下げるとニッとまた笑う。
「ユリちゃんか。可愛い名前だね。じゃあまたね~」
リョウタさんはレジを済ませ、私に手を振って出て行った。
ちょっと男の子と話すのが苦手な私の携帯のメモリーに、初めて男の人の名前を入れてみた。
何だろう、ちょっと不思議な気持ち。
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