太陽と仔犬

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いつもひとりぼっちの仔犬がいました。 仔犬は気がついた時からずっとひとりぼっちでした。 他の仔犬には母親やたくさんの兄弟がいるのに、どうして自分には誰もいないのだろう。 もしかしたら、母親や兄弟たちは何処か違う場所で、仔犬が来るのを待っているのかもしれない……。 そう思い、仔犬は旅に出ることにしました。 行けども行けども、仔犬の家族は見つかりません。 ふわふわで白かった毛並みは、今では埃で薄汚れてしまい、尻尾はだらりと下がったままです。 疲れた仔犬はふと、今気付いたように空を見上げました。 空には大きな夕陽が傾こうとしていました。 あんなに高い所にいるお日様なら、ぼくの家族を知っているに違いない。 仔犬は立ち上がり、空に向かって呼び掛けた。 「あの、お日様。ぼくの家族をしりませんか」 夕陽は仔犬が動くと遠ざかり、仔犬はまた夕陽を追うのでした。 「待って下さい。どうかぼくの話を聞いて」 仔犬は精一杯走りながら、夕陽に呼び掛けます。 けれどもその真剣な思いを知ってか、夕陽はどんどん山陰へと姿を隠そうとしています。 仔犬は爪先から血がにじんでいることすら気付かずに、ただ夢中で夕陽を追いかけました。 「待ってお願い、行かないで」 仔犬の呼び掛けも虚しく、夕陽はすっかりと姿を隠し、辺りにはひっそりとした闇が佇んでいました。 その時になって、ようやく仔犬は足を止めたのです。 身体を弾ませて、苦しそうに息を吐いて、仔犬は泣きました。 心が震え、身体が裂けそうな声で泣きました。 やがて泣き疲れて眠った仔犬の頭上に数多の星が輝きました。 夕陽を追い掛けていた仔犬のようすを、薄闇から覗いていた月は、眠った静かに囁きました。 どうか、この仔犬の悲しみを拭い去り、喜びを与えたまえ。 月はそう囁くと、仔犬に柔らかな銀色の光を注ぎ、その眠りを見守り続けました。
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