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先ほどの大笑いから一転、微妙な空気が漂う中で2人は沈黙を守っていた。
早くも帰って欲しい意図を瞬殺で見破られた太一は、あぐらをかいているサンタに対してなぜか正座だった。
「……」
「……」
お互いに牽制しあったまま時だけが流れる聖夜。
先に口を開いたのはサンタの方であった。
「……プレゼントだったな」
「え?」
唖然とする太一の胸元に包装された箱が投げられる。
問うまでもなくプレゼントだった。
「あ、ありがとう……」
「……フン」
頬をかきながらそっぽを向くサンタに対し、太一に笑顔が浮かぶ。
「俺が帰ってから開けるんだぞ?」
「うん!!」
照れを隠しきれなくなったのか、太一に背を向けながらサンタはそう告げた。子供ながらにそれが照れ隠しだと分かり、太一の恐怖や警戒心が一気に薄れていった。
嬉しさを抑えきれないのか、背を向けたままのサンタに抱きついた。
――やっぱりサンタさんは良い人なんだ
――ありがとう、サンタさん
太一の心に温かい何かが芽生え、そのまま言葉となってサンタに届く。
「サンタさんの背中、温かい」
「そうかい」
「サンタさんの背中、大きいね」
「そうだな」
「サンタさん、良い匂いがするね」
「――そいつぁ血の匂いさ」
サンタの口元が歪むのを太一は見た。
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