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クリスマスの夜に現れたサンタクロースに、体を押さえつけられて殺人予告をされた子供がどこにいようか。
小粋な冗談にしてはいささかスパイスが効き過ぎている。
天国から一転、頭が追いつかないところまでたたき落とされた太一の感情が、歓喜から悲しみに変わるのにそう時間はかからなかった。
「――ッグ、ンッグ――」
口を押さえられているせいで満足に泣くことも出来ず、ただ太一の頬に一筋の道が出来る。
「泣くな、万が一お前の親にバレれば大変な事になる。落ち着け、落ち着くんだ」
どう考えても原因は自分なのに、目の前のサンタクロースは泣くことすら太一から奪い取る。
数分後、ようやく落ち着いた太一は自由にならない顔をゆっくりと縦に振る。
それを見てようやくサンタクロースは太一の口から手を離したのだった。
「お、おじさんは……」
太一は恐る恐るそう訪ねた。もしかしたら、おじさんはただの迷子で、サンタクロースにたまたま似ていただけかもしれない。そう思ったのだ。
「……見ての通り、しがないサンタクロースさ」
本日二度目の悲劇が太一を襲った。
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