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ハッキリと男の口からサンタクロースと告げられ、太一の目に再び涙が滲む。
「おっと泣くんじゃないぞ?泣いたら――」
自称サンタクロースは満面の笑みで言うが、その後に続くであろう言葉を想像すると、笑えるはずがなかった。
「あークソ!また減給だよ……ついてねぇなぁ」
誰に言うでもなく、サンタは恨めしげに独り言を吐いた。
「お、オジサンはサンタさんなの?」
いまだに信じられず、むしろ信じたくない太一は怯えながらもサンタに訪ねた。
ちらりと太一を横目で見ると、サンタは頭をかきながら面倒くさそうに口を開いた。
「あー、サンタだよ。今年ドラフト4位の下っ端だけどな」
「ドラフト!?」
様々な驚きが太一の頭を駆け巡る。
「あぁ、坊主は小さいからまだ分からんか。ようするに、サンタ界のお偉いさんが、こいつサンタにしよう!と思った奴を指名するんだ。給料良いから断る奴はいねぇのよ」
懐からタバコを取り出してふかしているサンタは得意気にそう語る。タバコはパイプではなく思いっきり日本製であった。
サンタの言葉に繋げるように、太一は再び質問をする。
「お、お給料って……?」
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