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「ちょ、ちょっと待ちやがれ少年!!」
止まるわけがない少年は部屋を飛び出し、振り返ることなく階段を駆け下りる。
すぐさまドタドタとサンタが追ってくる気配を背中に感じながら、太一は両親の寝ている寝室へ飛び込んだ。
「お母さん!お父さん!起きて!!起きてよ!!」
必死に両親を揺さぶるがなんの反応もない。それでも太一は必死に揺すり続けた。
「無駄だぞ少年」
後ろから希望の悪魔が優しく声をかける。太一がゆっくり振り返ると、サンタは極上の微笑みで太一を出迎えた。
「お父さんやお母さんは魔法で眠ってんだ、大人しく部屋に戻ろ?な?」
「で、でも僕――」
「な?」
二度目はお願いではなく脅迫。幼い太一にですら感じとれる威圧感が両親の寝室を支配する。
結局、前に太一、後ろにサンタと完全なVIP扱いで再び太一の部屋へと引き返す羽目になったのだった。
「あの――」
「あん?」
部屋に戻った太一とサンタは、お互いに話し出すきっかけが持てずに牽制し合っていた。
その見えない攻防に太一が終止符をうつ。
「ぷ、プレゼントは……」
太一の精一杯の勇気だった。
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