出会い

6/10

183人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
「鳥頭は三歩歩けば忘れる」とは良く言ったもんだ。 俺は角を一つ曲がる頃には、すっかりガキの事なんざ頭から消えちまってた。 胸ポケットからタバコを取り出し、立ち止まって火をつけた。 いや、実際は着けようとしたんだ。 でも前からの風でなかなか着かない。 俺はクルリと後ろを向いて、ようやく火を着けて顔を上げた。 その瞬間。 「おわっ!!お前何ついて来てんだ!!」 俺は思わずタバコを落としそうになった。 何故ならすっかり忘れていたガキが、ぬいぐるみを抱えたまま立っていたからだ。 …ソイツは何も言わずに俺を見上げてる。 今にも泣きそうな…そんな目で。 「チッ!俺について来ても楽しい事ぁ無え、サッサと帰りな!」 面倒は背負いたくねえ。 こんな訳の分からないガキを連れて歩くなんてごめんだからな。 俺はタバコを一息吸い込むと、きびすを返して歩き出した。 ザッザッザッ…トコトコトコ ザッザッザッ…トコトコトコ 「………………。」 何だってんだ…。このガキは何故追いて来る…。 明らかに足音が多く聞こえるのは幻聴じゃ無いはずだ。 俺は再び振り返った。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

183人が本棚に入れています
本棚に追加