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舗道に散らばるタバコの吸い殻を見つめていた。
この街はあの頃と何も変わっちゃいなかった‥。
煌びやかな夜に、群がるように生きる男と女。
金と暴力が支配する街。
あの頃の俺は、ただひとり愛した女と暮らしたくて、しがらみだらけの街から二人で逃げようとした。
女の名前は‥由美子。
彼女の親父は名の知れた会社の重役だった。
その親父は、定職にもつかない俺との仲を裂くために、ヤクザを雇った。
街を出ようと二人で車に乗り込んだ途端、引きずり降ろされ半殺しにされた。
由美子を取り戻そうと、ヤクザの一人に飛び掛かり左の耳に噛み付いた。
その場の記憶はそこまでだ。
気が付くと俺は、町外れの道端に捨てられていた。
ポケットにねじ込まれていた封筒には、手紙と一万円札が一枚。
手紙には…
《命は助ける。娘は忘れろ。
この街には二度と戻るな。
次に見かけたら私には連中をどうする事もできない。》
…と書かれていた。
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