吸い殻の街

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 …連中‥あのヤクザの事だろう。 とにかくあの頃の俺には、くやし涙で一枚の札を握り締め、この街から逃げ出すしかできなかった…。   俺、田辺和也 20歳 彼女、植本由美子 18歳 出逢って二度目のクリスマス・イヴの夜だった…。     …あれから16年か。 俺は街を離れ、職を転々としながら今は探偵の真似事みたいなことをしている。  偶然迷い込んできた人探しの依頼。 元刑事のウチの所長は、別の依頼で手が離せないとの事。   俺はひとりでターゲットの足取りを追い、この街にたどり着いた。 ターゲット‥音原 茂 22歳。 どうやらヤクザの《クスリ》を横流し、この街で捌こうとしているらしい。 命知らずか、ただのバカなのか…。 しかし、なぜ《この街》なのか。  もう三時間もこの店の前で待っていた。 ウチの所長じゃあるまいし、張り込みは苦手だった。
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