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「交差点で居眠り運転で信号を無視してきたトラックに突っ込まれて即死でした。せめて荷台に当たっていたら助かったかも知れませんが…お悔やみ申し上げます。」
警官の声と椿ちゃん達の泣く声が霊安室に響く。
「容疑者のご家族の方が面会を希望されてるんですが…どうなさいますか?」
婦警の人が聞く。
『私が行きます。』
椿ちゃんでは話になりそうにないから行くことにした。
「この度は私共の息子がとんでもないことをしでかしまして申し訳ございません!!」
加害者の両親が土下座する。でも土下座されても困るだけだ。
『顔を上げてください。突然のことで驚いていらっしゃるのはそちらも同じでしょう?それに、どんなに謝罪されても両親が帰ってくるわけではありませんし。それより、息子さんの面会に行かれたらいかがですか?』
泣くことも出来ないが余裕もない。現実に気持ちがついていけなかった。
「いえ、まだ取り調べ中で会えません。これ、少ないですがとりあえず使ってください。」
茶封筒に入っていたのは20枚の万札。
『どういう意味でしょうか?』
意図を図りかねて加害者の両親を静かに睨み付ける。
「もちろんお葬式の費用も慰謝料もお支払します。しかし、ご兄弟三人では当面の生活も困るでしょう?ですから使ってください。他の意図はありません。」
それならいいかと思い受けとる。生活に困るのは確かだ。
『必要になったら連絡します。今日は…姉も混乱しておりますからそっとしておいていただけますか?』
そう言うと加害者の両親は頭を下げて帰っていった。
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