はじめまして

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   少し、私どもの仕事についてのご説明をさせていただきます。    その前にまず、わが社の社長であるサンタクロースの仕事についての誤解を解かねばなりません。    皆様は、サンタクロースがクリスマスにプレゼントを配っていると思っておいでではありませんか?  もう、それが誤解です。    お恥ずかしい話、社長はいまだかつて、プレゼントを配ったことは1度たりともございません。    え? じゃあ、あの白くて大きな袋はハッタリか……ですと?    お怒りはごもっともですが、袋がハッタリと言うわけではありませんのでご安心下さい。    あの袋には『愛』が詰まっているのです。    サンタクロースの本来の仕事は、クリスマスに誰かが誰かの為に用意したプレゼントに『愛』を降り注ぐことなのですから、つまり袋の中身は商売道具と言えましょう。    察しの良い方は、もうお気づきですね。  つまり、プレゼントが無ければ、サンタクロースの仕事は無くなってしまうのです。    さぁ、そこで私どもの出番です。    クリスマスに用意されるプレゼントが、ひとつでも増えるように……私どもが根回ししているわけです。  とは言え、新規のプレゼントと言うものは、お子様が生まれたとか、恋人が出来たとか、そう言った理由で私どもが営業せずとも増えるものです。  ですから、自然に私どもが力を入れるのは、継続の方に対してになります。    昨年までプレゼントを用意していた方が、『どうせ、サンタクロースなんているわけないのは子供もわかってるんだから、今年からはもういらないだろう』などと、今年からプレゼント無し――これが痛い。    サンタ企画の年間目標として『子供には、一生プレゼントの継続を!』というのがあるくらいなのですから、サンタクロースを信じる、信じないは別として、子供が大人になったってクリスマスプレゼントを用意して欲しいというのが、わが社の願いです。    恋人同士にしても、馴れ合いになってしまって『もう、今年はいいや』などと思わないでいただきたい。    私どもサンタ企画営業部員は、そんな方の元に参ります。
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