『夜啼石』

3/9
2220人が本棚に入れています
本棚に追加
/1190ページ
 それは、俺がその家に移ってからの出来事だった。  普段は夢などみなかった俺が、何故かその日に限って、生まれて初めて夢をみた。  景色は暗く見知らぬ場所で、見た事も無い女が顔も上げずに、ただひたすらすすり泣いていた。  俺は最初戸惑った。  異性に対する声のかけ方が分からないのもあったが、何故見た事も無い女が夢の中に出てくるのか、それが一番不気味だったからだ。  しかし、何時までも泣いているのを無視するのも居心地が悪いと、仕方無いという気持ちと相まった好奇心から、おずおずと声をかけた。
/1190ページ

最初のコメントを投稿しよう!