25人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
やがて曲が始まりアリスが歌い出した。
テンポのよいリズムと高い声が絡み合い、結晶の様に歌を成して行く。
それにしても、直感と言うのだろうか。
英志は小さな画面に映される明らかに自分より幼い少女に、狂気じみた"何か"を感じていた。
それは見慣れない長く美しい髪のせいでもあったし、拘束され自由を奪われた純白の姿のせいでもあっただろう。
あるいは生々しく縦に走る、胸の大きな傷跡だったのかも知れない。
しかし、所詮全てはただの飾りであり、この禍々しさの理由にはなり得なかった。
"何か"があるのだ。
もっと決定的で、神秘的な程洗練された狂気が。
「子供がふざけて作った歌みたいだろ。これは"アイスクリームの呪い"って曲で、夏休みにサーティーワンのアイスを1種類ずつ食べてたら9月になって腹を壊したって話。他の曲も結構あるみたいだけどな」
英志は晶の話をうわ言の様に聞き流した。
晶の言葉など、英志には届かない。
いつの間にか英志は取り付かれた様にひたすら画面を見つめ、アリスの甘い、あまぁいヴァニラの声に聞き入た。
すでに、晶の話などどうでもよかった。
最初のコメントを投稿しよう!