姫のウタは小鳥を殺す

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一曲が終ると、次々と他の歌が始まる。 悪趣味でグロテスクなイメージ……。 そして、何処か惹かれるものを持つ……。 それは苦しみと悲劇の混じる表情ではなく、爪を立てもがく仕草でもない。 そう、声。 彼女の声。 七色に変わる心の悲鳴。 子猫の様に高い声で。 老婆の様に低い声で。 少年の様に無邪気な声で。 過食拒食症の少女が喉に指を入れ嗚咽を上げる様な声で。 アリスは歌うのだ。 優しさに溢れる女神の声で。 全てを憎む悪魔の声で。 幼く甘い、あまぁいヴァニラの声で。 狂気に満ちていた。 一度聞いたら忘れない。 あまりに醜悪な声。 美しい心。 それは彼女に平伏す観客の心を握り潰す程掴み、画面を見つめる英志の心をも捕らえたのだった。  
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