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英志は一番遊び慣れた町に行く事にした。
この周辺は一通り知ってるので、何の不安もない。
不安?
駅を出るとしばらく大通りが続く。
無駄な喧騒、澱んだ空気。
特に行くあてがなかったので、とりあえず最初の交差点に建つビルに向かうつもりだった。
ビルと言っても何もない。4階建ての少し広いデパートと考えた方がいいだろう。
食品売り場、衣服、雑貨、本・CD、ケータイ屋、カフェ。他にもあったが、英志は忘れた。
つまり、その程度だったと言う事になる。
辺りにはゲームセンターやカラオケ、ネットカフェもある。
マック、靴屋、そしてなぜかマツキヨ。
子供が遊ぶには十分な環境だ。
例えるなら、汚れたオフィス街の裏に切って張り付けられた、有料の公園だった。
しかし、交差点に付くまでに1ヶ所だけ「伊純 心療内科」と書かれた場違いな建物が取り残されていた。綺麗な淡い茶色のレンガ造りで、外見だけなら喫茶店に見えなくもない。
すぐに医院長が変わり者だと見当が付く。
果たして、こんな所に人生相談をしに来る情緒不安定な人間などいるのだろうか。
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