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目的地に着くと平日とあってか、案の定人は少なかった。
1階の食品フロアには用がないので、英志は入ってそのままエスカレーターに乗ってしまう。
2階の本屋に寄り、3階の文具売り場で何か買う物はあったかと悩んでる内に、いつの間にか沈んだ思いも気にならなくなった。
そのうち、結局何も買わずに英志が立ち去ろうとすると、不意に背後からピッタリと寄り添う気配を感じた。
今まで集中していたせいか、全く気配に気が付かなかった。とにかく通行の邪魔になってはいけないと、半ば無意識に道を譲る。
しかし、気配が要求しているのはそう言う事ではないらしい。
避けたつもりで端に寄ると、まるで英志に吸い付く様に気配も踏み出した。
不審な人物と共に英志もろとも、監視カメラの死角へと追い詰められる。
英志が何者かと思わず振り返ろうとすると、
「動かないで」
幼さの残る少女の声で、刃物の様に鋭利な威嚇と警戒をたっぷり含んだ脅迫が投げ付けられた。
いつの間にか分散していた意識が一気にかき集められる。
英志は動揺と驚きで、金縛りにあったかの様に微動だに出来なかった。
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