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英志はその声に聞き覚えがあった。
自負する訳ではないが、確かに確信した。
いや、1度聞いたら忘れない、甘美で残酷な声。
英志が生活している周辺で彼女も生きていると言うだけで、英志には奇跡に感じられた。
しかし、そんな事に困惑すると同時に、何故か彼女が自分の背後にいる事だけは当然に思えた。
まるで、全ての巡り逢いに偶然はなく、世の中は常に必然から成ると信じられる程に。
きっとこの世で出会う人々は誰も、前世で強い絆を共有していたのだろう。
そう。
英志の背後にいるのは、間違え様がなくアリス@だった。
状況とは裏腹に、英志はしばらく運命の心地よさに浸っていた。
もちろんアリスに逆らう気など微塵もない。
変な話だが、今までケータイの小さな画面でしか見た事のない少女を、ある種信頼しきっていたのだ。
安心、とまでは流石にこの状況下に置かれて言えないだろう。もちろん、それなりの緊張感を持っている。
何故アリスがここにいるのか、自分は一体何をされるのか、ひたすら疑問は尽きない。
つのるのは、不安。
そしてまだ確認もしていない少女への、根拠のない信頼だけだった。
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