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「最悪…」
放課後、彩と帰りながら、私はポツリと言った。
「まぁ、あれは光が悪いね。なんたって、“学校一怖い松田先生”の授業中に考え事だもん」
すると、彩は途中のコンビニで買った肉まんを頬張りながら言った。
てか、その細身のどこに肉まんなんて入るんだよ…。
「で、今年も行くんでしょ?」
「どこに?」
急に話題を変えてきたから、私はキョトンとして彩を見た。
すると、彩は盛大にため息をついてから言った。
「クリスマスよ、クリスマス!」
「…………あぁ!」
言われてやっと気がついた。
あ~、もうそんな時期か…。
そう考えると、妙にしみじみしてしまう。
「忘れちゃ駄目でしょ。大事な約束なんだから」
彩は知ってる。私が毎年駅前に行っていることを。
「大事って言っても、子どもの口約束だし…。それに、あっちは忘れてるかもしれないし…」
考えてみると、確かにそうだ。
小さいときの、口約束。しかも、10年以上も前の…。忘れてないとは、言い切れない。
「それでも、光は毎年行ってるんでしょ?」
「うん…」
子どもの口約束だとしても、約束は約束だし…。
「じゃあ、今年も行くでしょ?」
「まぁ…」
そりゃあ、毎年行ってるから、もうすでに恒例となってるけど…。
「よし。わかった。じゃ、今年もイブの日にね」
「あ、うん」
「じゃね~」
「じゃね~…」
彩は言うだけ言うと、角を右に曲がっていった。
ったく。いっつも強引なんだから…。でも、それが彩の良いところだったりするんだけどね。
私は、少し彩を見送ったあと、家路についた。
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