52026人が本棚に入れています
本棚に追加
/590ページ
「ジジイ!」
自分が発した声で目が覚め、トウヤは慌てて自分の口を片手で塞いだ。
さっきまで自分が寝ていたことを、分かっていたのに…
「馬鹿か俺は!」
小声で自分を罵る。
直ぐに気持を落ち着かせて辺りを油断なく見渡す。
ここは、『ホムラ』国に隣接する森の中だ。
ただ、この森は常に霧が立ち込めていて、視界が悪いうえに自殺の名所として有名な為、誰も立ち入る事がないのである。
今も霧が立ち込めていて、2~3m先からは回りが全く見えない。
任務でなければ、トウヤも絶対に入りたくない。
「あ~クソッ!
何でこんな事になったんだよ!」
警戒を解いてはいけないのは分かっているんだが、こんな非常事態に冷静でいろというのが、無理な話しだ。
「…!」
不意に背筋に冷たいものが走る。
とっさにトウヤは走り出した。
トウヤが走り出したと同時に、背後で木が裂ける音が響く。
「クッ! もう見つかったのか!」
当たり前だ。
隠れている人間が大声で叫べば、誰だって気付くだろう。
トウヤは、走りながら腰に付けていたホルスターから銃を抜いた。
全体が銀色に輝き、グリップ部に埋め込まれていた宝石が、淡く輝きだす。
自分の中の魔力が、銃へ流れ込んでゆくのが分かる。
最初のコメントを投稿しよう!