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バルゴ隊長も、トウヤの報告に偽りがあるということは分かっているだろうが、特に何も聞き返してはこなかった。
「魔法陣を確認させる」とだけ言うと、後はもう話すことは無いと雰囲気で伝えてきた。
トウヤはホッと安堵の息を吐いて、隊長室から出ようとしたが、そこで思わぬところから声があがった。
「トウヤ、さっきの二人にもそうだったけど、どうして嘘をつくの?」
ミリィが、不機嫌丸出しの顔でトウヤに聞いてきた。
嘘とは、ミリィがドラゴンだという事実を、トウヤが隠していることだろう。
思わぬ伏兵がいたものだ、今まで何も言わなかったから、ミリィも納得していると思っていたが、違った。
ただ今まで我慢していたようだ。
「嘘とは、何が嘘なのかな?」
バルゴ隊長の低い声が響く。
困った。
これはマズイ。
どうする?ドウスル?どうすんの~!
かなりのスピードで、考えたが、浮かんできたのは「現実逃避」。
全然ダメじゃネェか!
「偶然出会ってだなんて…、悲しくなるじゃない。私達、夫婦でしょう?」
……思考が停止すること一分半。
完全に固まっていたらしいトウヤは、ミリィの説明。
「一人で任務に行くと言うから、心配でついて行ったのよ。そしたら、あの森でシルメリアの部隊が魔法陣を使って召喚術をしていて…、暴走を食い止めるのに苦労したわ」
聞くともなしに聞きながら、確信した。
ミリィは楽しんでいる。
俺は、何て相手と一緒に行動することになってしまったんだろうか…。
ミリィの楽しそうな顔が、化物に思えた。
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