山さんの兄さん

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    川のほとりに住んでいる  埼玉生まれの山さんは  ブルーシートの家を建て  日がな一日缶集め  捨てられているコンビニの  弁当は決して拾わない  それが意地だと言いながら  半額セールの弁当を食う         昭和のある時、この国は  戦争をしたと言った時  遠くを見つめる眼差しで  兄は知覧を飛び立って  帰らなかったと下を向き  家族も空襲で死んだという    ああ僕の父さんや  ああ僕の母さんも  社会のゴミだと言ったけど  それでいいのかと感じてた         日本の犠牲になったとは  山さんは決して言わないで  勉強しろよと、山さんは  偉くなれよと笑ってた  ある時河原に行ったなら  役所の若造に山さんは  家を壊されてたたずんで  不法占拠だとこずかれた    ああ僕の先生や  ああ僕の友達も  社会のゴミだと言ったけど  それでいいのかと感じてた         山さんの仲間が去ったあと  河原はゴミの山だらけ  禁止区域でゴルフして  何が悪いと言う奴も  新たな日本の姿なら  山さんや山さんの兄さんは  泣いていたんだと気が付いた  怒っていたんだと気が付いた    ああ若い僕達は  ああそんな過去さえも  何も知らずに生きている  自由な国だと言いながら    夕陽に染まった街並みは  平和になったとおもうけど…
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