第五章

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  母さんが亡くなってから僕たちはみんなに哀れんだ目で見られた。 僕たちは悲しくないのに……。 そう思っていた。 でも、実際は違うみたいだった。 キリス。 夜中にトイレに行きたくって目が覚めた僕は隣にキリスがいないことに気づいた。 きっとキリスもトイレに行っているんだろうな。なんて軽く考えていた。 トイレにキリスがいなくて不安になった。 もしかして、キリスも……? そんなことを思ったら体が勝手に動いていた。   「キリス……キリス……」   不安からなのか力無い言葉しかでなかった。 それでも名前を呼びながらふらふらした足取りで探した。 泊まり込みの家政婦をしているメリーの部屋から声が聞こえた。   「なんで、なんっ……で」   キリス?   「母さ、んはなんで……い、いないのっ」   数センチだけ開いていたドアから聞こえたのは、聞き間違えるはずないキリスの泣き声だった。 キリスは泣き虫だから。 泣いている。 でも違う気がした。 いつもと何かが違う気がして僕は二人に見つからない程度の早足で部屋に戻ってベッドに入り込んだ。 すっぽりと掛け布団をかぶって泣いた。 母さんがいないのが悲しいのか、母さんのことで泣いているキリスが嫌で泣いているのかわからなかったけど、母さんが関係することで泣くのが嫌だったから僕はもらい泣きだと決め込んだ。  
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