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「それにしても、カップルばかりよ、この街は。一人で歩いてると、カップルの女の方からなぜか見下されるのよね。勝ったつもりなの? って感じだけど。私は仕事で来てるのに」
ふん、と不機嫌そうに相方はそっぽを向く。その相方に僕はカイロを握らせた。すると、相方は驚いた表情で僕を見てきた。
「じゃあ、仕事頑張ろう。カップルの人たちは二人でいることで幸せなんだ。でも、僕たちは違うよね?」
「あ……うん。カイロありがと……って、どこで買ったの?」
さぁ、仕事仕事! と張り切って声を出したら、さりげなくローキックされた。
でも、大事そうにしっかり懐にカイロを入れてくれるあたり、けっこう可愛らしい。
僕は微笑みながら相方の服に付いた雪を払ってあげる。相方も少し微笑んでから、僕に手を差し伸べてくる。
「いくよ」
「うん」
僕はその手をしっかりと握り締める。微かなた恩を感じながら、僕は雪空を見上げる。その瞬間、相方がたん、と地面を踏みきり──浮く。
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