忘れ傘

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とにかく今は帰ろうとは思えない。 こんなに寒そうな空や空気を見たのは、昔小学生のときに初めて行ったスキー場のゲレンデ以来だった。 でもどうしよう。おそらく母さんはカンカンだろう。お腹を空かせたライオンのようにグルグルと唸っているに違いない。 幸いなことに、いたずらライオンみたいに私を追いかけ回したりはしないだろう。 私は絵本を読んでいれば何時間でも待ってられるけど、母さんは無理だろうなあ。 待つのは性に合わないライオンですから。
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