忘れ傘

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レジで代金を支払った後に彼はまた優しい声で言った。 「いいえ。いいんです。私がほんとわけわかんないことしちゃって…。迷惑かけたから」 「んー。まあ、でもこれでチャラだね。それに逆に僕は助かりました。ありがとうございました。いろいろ楽しかったです」 そう言って握手を求めた彼の手をそっと握り返した。 彼は、では、さようなら。と言うように手を振って店から出ようとした。 私の口はまたしても暴走し始めた。今日はブレーキの調子がほんとに悪いらしい。 「あの!」 ああ、呼び止めちゃったのね、私。
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