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ヒロトには金があったためしがなかった。30歳になるまで欲しいものばかりなのに何一つ手に入らなかった。夜中に高速道路を吹っ飛ぶように追い越していく銀色の車。魅惑的な緑色の光を放つダッシュボード。
ヒロトは欲しかった。銀色の車が。
リムジンを出、高級レストランを出、空港からサングラスの陰に隠れて日差しの中に出てくる女たち
それも欲しかった。
もっと沢山あったが感じはわかったと思う。
一所懸命に働いたが何の役にも立たなかった。
給料で生活費は賄えたものの、それだけだった。
貧しい時は夢を見るものだ。高価なものがあれば人生はマシになると確信して。
その通りだが、金持ちの場合「マシな人生」にもそれなりの限界がある。
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