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当たり前のことながら、小学校と中学校はやっぱり違った。朝も早いし、道のりは遠い。朝学習という小テストもあって、結構ハードだった。
家では大人しくしていた私は、中学ではやらかした。忘れ物はさるものながら、担当教師に対する態度も最悪で、よく呼び出された。それと友人関係(といってもただのクラスメイトだが)の問題が重なり、かなり沈んでいた。いよいよ本格的に、自分は高橋家の子供ではないと思い始めた。でも、もし本当のお母さんなら、お腹を痛めてまで産んでくれた。いらないなら、流産だってあったはず。それをしないで産んでくれたのだとしたら、こんなことを思うのは失礼だ。今までだって色々買ってもらえたし、色々連れて行ってもらった。これが、お情けでないと思いたい。だけど、やっぱり不安。
中学校生活も半年が過ぎ、私はお母さんに手紙を書いた。
『お母さんへ
自分の子供を愛していない親なんていない。それは本当でしょうか?
私は今まで、何度もお母さんに迷惑を掛けました。
私たちが東京に残ると言った時、育てていける自信がないと言ったそうですね。
それでも、私を育ててくれてありがとうございました。
私は、お母さんのような素晴らしい人間にはなれなかった。
何故か私は学校に行きたくなくなってしまいました。
今までの事を考えると、涙で目が見えなくなります。
もし生まれ変われるのなら、もう少しましな人間になろうと思います。
お母さんが連れていってくれたイベントは、本当に楽しかった。何より、お母さんに連れていってもらったのが嬉しかった。
今まで本当にありがとうございました。
I love you. 鈴』
この手紙を机の上に置いて、布団を干すための紐を手に取った。マンションの六階から飛び降りる勇気はなかったから。水色の紐を首に巻いて、両手でなるべく強く引っ張った。だけどあまり細くなかったから、うまく絞まらなかったのだろう。
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