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そんな滑稽な様子を見て、佐伯は堪えきれなくなったのか、笑みが口元からこぼれた。
「よし、じゃあついでになんだが、風見原に後で俺のところに来るよう伝えといてくれ」
「りょ、了解しましたっ!」
カクカクした動作で一礼すると、全力疾走で唯は駆けていく。
動きはいまだに不自然で、ブリキの兵隊が走っているかのようだ。
バタバタした靴音がやがて遠くかすかに消えていくと、佐伯の浮かべていた笑顔がふっと消えた。
そこにあるのは、固い信念に彩られた決意の顔。
「……覚悟は……とっくに決めてるさ」
その呟きは、誰の耳にも入ることなく、虚空に霧散した。
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