距離

2/11
前へ
/485ページ
次へ
「よいしょ……っと」 真鶸はシミュレーターの頂上から一気に飛び降りた。 あたりにいた整備員たちのねぎらいの言葉に返事を返し、ヘルメットを脱いだ。 ひんやりとした空気が、いくらか汗ばんだ肌を優しく撫でる。 後ろから足音がすると、聞き慣れた低い声が真鶸の耳に届いた。 「危ない事はするもんじゃないぞ」 「……修さん」 振り向くと、案の定、そこには熊がツナギを着たような男が立っていた。 “危ない事”とは何の事だろうと一瞬考えて、ふと思い当たる。 「だって面倒臭かったんだもん」 「飛び降りたら危ないだろう。ちゃんと梯子を立て掛けてるんだ。使ってやれ」 「むー……」 反論できず、真鶸は黙りこくってしまう。
/485ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1488人が本棚に入れています
本棚に追加