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ばたんと扉を閉めると、笠置は振り返って思い出したように口を開いた。
「そうそう、緋龍の整備主任だが、俺がやることになった」
「えっ……!」
出し抜けに言われたため、真鶸は目を丸くした。
「不満か?」
笠置がやや不審そうな表情をすると、真鶸は首を横に振る。
「ううん、全然! あたしは修さんなら大満足だよ!」
「そうか、なら良かった」
力を込めた真鶸の言葉に、笠置はたちまち破顔した。
一方、真鶸は何かが引っ掛かったようだった。
「……でも、修さんって黒龍の副主任じゃなかった?」
「そうなんだが、一応兼務することになってな」
「うわー……。兼務とか、修さん大変だね」
同情気味の視線を真鶸は送ったが、笠置は呑気に笑った。
「いやいや、兼務とは言っても形だけだ。皐月ちゃんがうまくやってくれているから、俺は黒龍の事をそれほど気にしなくても済むんだ。あの子はあれで超一流の腕前だからな」
「皐月さんが?」
少し意外な言葉だ。
真鶸の感覚では、皐月は確かに明るくていい人ではあるものの、超一流の腕前というイメージではない。
もちろん、自分の仕事はきっちりこなしているし、一流なのだろうが、相当なベテランであろう笠置がベタ褒めするほどとは思わなかった。
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