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そして今、自分が輸送機に乗って北海道からはるばる台湾に向かっている理由。すなわち二週間前の突然の辞令。
城沢護(シロサワ マモル)伍長に台北基地所属、第601強化猟兵隊への転属を命ずる。
鳶色の瞳、適当に切り揃えた髪は生まれつき色素の薄いため、赤銅色。十七歳にしてはやや小柄な体躯に深い緑の軍服を着込んでいる。
それが、彼――城沢護伍長に下った辞令だった。
聞いたこともない部隊。
そして突然の辞令。
それらが護に少なくない戸惑いと不安を抱かせたことは、想像に難くない。
シートベルト着用のアナウンスで我にかえった。窓を覗くと、すでに輸送機はかなり高度を下げてきている。
東シナ海戦争における日本軍の最前線。陸海空軍の様々な施設を内包する、一大軍事拠点――台北(タイペイ)。
「台北か……」
知らず知らずのうちにそう呟いた。
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