1488人が本棚に入れています
本棚に追加
日差しが強いとはいえ、結構なスピードで基地内を駆けてゆく車に揺られていると、全開にした窓から吹き込む風が、うなじを撫でる。汗がひいてゆくのを感じた。
「そういえば、城沢伍長は幾つなんですか?」
やや唐突な質問に、護は内心少し戸惑いながら答える。
「……十七ですが」
「んなっ!?年下さんだったんですか!?わたしはてっきり年上かなって!」
「……それはまた何故?――てか年上だったんですか……」
「うーん、なんとなく。大人ぽかったからですかね」
「……」
しかし――横目を使って眺めてみても、年上には見えない。今も唯はぶつぶつ言いながら、運転席のシートにずり落ちそうな形で座っている――たぶん、そうしないとアクセルに足が届かないのだろう――前方視界が極めつけに悪いだろうに、不思議と運転は確かだ。
「あ、着きましたよ」
視線を上げると、目の前に適度に古びた鉄筋コンクリートの施設があった。門には、達筆な字で『第601強化猟兵隊本部』と書かれた木の看板がかかっている。
門の前のセキュリティシステムには指紋とID認証がいるが、入力のために、唯はシートの上に立って、精一杯指を伸ばしている。
入力が完了したらしく、遮断機が上がる。
車はゆったりとしたスピードで、門をくぐっていく。
門から少し奥に行ったところにある駐車場に車を止めると、忘れていたぬるい空気が、また体にまとわりついてきた。
「行きましょう、司令が待ってます」
唯の言葉につられて、ゆっくりと足を踏み出した。
最初のコメントを投稿しよう!