~第壱幕~

2/7
前へ
/571ページ
次へ
時刻は夕暮れ刻、丁度中学生にとっては終礼を終える頃の時間だった。 何処にでもあろう普通のこの中学校では、最近都市伝説にも似たある噂で持ち切りであった。 "日本刀を携えた少年" しかしその話を全く信じない者も中にはいた。 その一人で、この中学に通う彼女の名は"花染修"。 妖怪や超能力の類いを全く信じない、ごく普通の中学三年生だった。 その修は幼少期から剣術を得意とし、よく剣道部の助っ人として呼ばれては、敵大将を易々倒せるくらいの腕前をもっていた。 そして今日も、友達のまりかが一緒に帰ろうと誘いに来たのを断り、 「修ぅー、帰ろ!」 「あ、ゴメン先帰ってて」 「どうして?」 「今日、剣道部の助っ人頼まれてるんだ」 やはりクラブの助っ人に呼ばれているらしく、そそくさとその準備をしていた。 そしてその後、校内の道場にて仕合開始の合図がされると同時に修は張り切って挑み、多少苦戦を強いられるものの最後には相手の一瞬の隙を突いて篭手を取り、相手の竹刀を弾き飛ばして面を取り、見事大勝利を納めた。 それから仕合を終え帰宅途中、疲れからかやや覚束無い足取りの修は、ついうっかりポケットの中から携帯を落としてしまっていたのだが、それに全く気付かずに真っ直ぐに家へと歩いて行った。 そして家に着いてドアノブに手を当てると、何故か鍵が開いている事に気付き、修はふと顔をしかめる。 「ん…?」 朝出る時には確かに閉めた筈なのに…修はそう疑問に思いながらも恐る恐るゆっくりと戸を開けてみた。
/571ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3277人が本棚に入れています
本棚に追加