~第壱幕~

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その目前には、鋭利な爪を切り落とされて表情を歪ませる男と、日本刀を携えた高校生くらいの少年の姿があった。 その少年は、まるで女性のように黒くて綺麗な長髪を襟足で束ね、左耳には二つのピアスをし、黒いサングラスを掛けていた。 「え、なんか暑い…暑い?」 修は緊張感からか頬に汗を伝わせ、まだ肌寒い春先にも関わらず不意にそう感じた。 「…幻妖だな…」 一方でそのサングラスの少年はゆっくりと重い口を開き、相手の男に低い声でそう尋ねる。 「ゲンヨウ…?」 修は、聞き慣れない単語を耳にして疑問を抱くが、そんな事はお構い無しに二人の会話は続けられる。 「あぁ俺は幻妖、名は"阿門"だ。てめぇは久神か?」 そのまた一方で、男も尋ねるようにそう返す。 「…?…?!」 修は二人の会話に着いて行けず、頭の中では"?"が駆け巡り、険しい表情を浮かべていた。 少年はそんな修の存在に気付いていないのか、 「…斬る…!」 物凄い勢いで素早く踏み込み、これまた素早い太刀筋で阿門の首を狙うが、阿門はその太刀筋を軽くかわし、余裕の笑みを浮かべる。 「ハッ!ガキが俺を斬ろうなんざ、千年早い!」 そう言いながら阿門は、まるで蟷螂(カマキリ)のような異形の物へと徐々に姿を変えていった。 「………っ!!!」 修は初めて見る光景と恐怖から声にならない悲鳴をあげていると、少年は漸く背後にいる修の存在に気付き、フッと後ろに振り向いた。 すると、 「…!!」 修の顔を見た少年は何故か驚いたような表情を覗かせ、阿門に刹那の隙を見せてしまう。 「何余所見をしている!」 そんな少年に対し阿門は容赦無く、余所見していた少年を右手の鎌で引き裂こうと大きく腕を振るう。 少年はすぐに反応して咄嗟に紙一重でソレをかわすが、僅かにかわし切れずにサングラスだけが真っ二つになり、隠れていた目元が不意に覗く。 「……!!」 その時、少年の瞳が見えた修は驚きを隠せなかった。
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