第三章 実行

2/4
前へ
/80ページ
次へ
「こっくりさん、こっくりさん。おいでになりましたら北の窓からお入り下さい。」  もう一度繰り返したが―― 「何も起こらないな」  呼んだだけで何か起こるなんてわけないか。  そう思った瞬間、  ガラガラ……  音がした。まるで―― 「なっ、窓が……!?」  窓が開くような音が。  北の窓だ。数センチしか開いていなかった窓が、今や全開になっている。 「何で……」  何もしていないのに――何かが窓を開けたのか?  “何か”が。  ビュオッ……  その時、突風が吹いた。  線香が消えた。  霊感など微塵もない俺でも分かった。  駿のようなオカルト好きじゃない俺でも分かった。  “何か”が来た。  もう後戻りは出来ない。  ……駿も今頃、こんな状況なのだろうか。  心細くなったわけではないが、カーソルを鳥居に合わせたまま駿に電話した。 「もしも――」 『もっしー! 優だよねっ?』  ああ、テンションが高い。  いつもと変わらない駿に少しばかりホッとしたのは、きっと気のせいだろう。 「ああ、もうやってるか?」 『うん! 今いろいろ質問してるよー』  もうそこまで行ったのかよ。 「……そうか、この電話繋げたままにしてくれないか」  駿の声が聞こえれば、(こんな奴でも)多少は心強いだろう。 『ふ? いいよー!』 「さんきゅ、じゃあ俺まだ呼んだだけだから」 『そうなのー? 早く追い付いてねっ!』  ガチャ、と駿が携帯を机に置いた音が聞こえた。俺も電話を繋げたまま携帯を机に置いた。 「こっくりさん、こっくりさん。いらっしゃいましたら“はい”のところへお進み下さい」  
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2283人が本棚に入れています
本棚に追加