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「こっくりさん、こっくりさん。おいでになりましたら北の窓からお入り下さい。」
もう一度繰り返したが――
「何も起こらないな」
呼んだだけで何か起こるなんてわけないか。
そう思った瞬間、
ガラガラ……
音がした。まるで――
「なっ、窓が……!?」
窓が開くような音が。
北の窓だ。数センチしか開いていなかった窓が、今や全開になっている。
「何で……」
何もしていないのに――何かが窓を開けたのか?
“何か”が。
ビュオッ……
その時、突風が吹いた。
線香が消えた。
霊感など微塵もない俺でも分かった。
駿のようなオカルト好きじゃない俺でも分かった。
“何か”が来た。
もう後戻りは出来ない。
……駿も今頃、こんな状況なのだろうか。
心細くなったわけではないが、カーソルを鳥居に合わせたまま駿に電話した。
「もしも――」
『もっしー! 優だよねっ?』
ああ、テンションが高い。
いつもと変わらない駿に少しばかりホッとしたのは、きっと気のせいだろう。
「ああ、もうやってるか?」
『うん! 今いろいろ質問してるよー』
もうそこまで行ったのかよ。
「……そうか、この電話繋げたままにしてくれないか」
駿の声が聞こえれば、(こんな奴でも)多少は心強いだろう。
『ふ? いいよー!』
「さんきゅ、じゃあ俺まだ呼んだだけだから」
『そうなのー? 早く追い付いてねっ!』
ガチャ、と駿が携帯を机に置いた音が聞こえた。俺も電話を繋げたまま携帯を机に置いた。
「こっくりさん、こっくりさん。いらっしゃいましたら“はい”のところへお進み下さい」
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