SP学園シリーズfirst①     『問題児』

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ここはSP学園…ではなく、壮大な敷地内にある『魔の森』。 その更に奥に聳え立つ、魔王が住む…という噂が立つ程に恐ろしい何かを放っている…“入口のない”塔。 「さぁて…40期入学生…今年はどうかなぁ??」 「光天(コウテン)、もう少し学園長らしく振る舞え。」 スーツ姿とマント姿の男の二人組。 「つれないねぇ。今年は念願の40期生じゃないか…キミがずっと待ち続けた…ね、竜王(リュウオウ)??」 スーツ姿の男に“竜王”と呼ばれたマント姿の男は塔のテラスから遠くに建てられている学園を見た。 「あぁ、待っていた。…ずっとな」 その姿を見たスーツ姿の男はクスッと笑った。 「運命が、動きだす…」 竜王が空を見上げながら呟いた…         「…姉ちゃん、俺行くから。もうこんな所にはいたくない、俺は…」 深い森の奥、神殿…という言葉が相応しいその場所に彼、葉陽 十夜はいた。 十夜に比べ、その10倍はあろう大きな翡翠石を目の前にして、十夜はただ立っていた。 「母さんを…姉ちゃんを、違う…もう大事なモノは失いたくない。…だから、」 十夜は俯き、涙をこらえる震えた声で言った。 その声が発せられた時、森が大きくざわめく。 ザワザワと落ち着きのない森の音に、十夜が顔をあげる。   「大丈夫。俺行くよ!!もう何も失わない為に!!」   翡翠石を見上げた顔は、輝いた笑顔だった。 その笑顔に森は落ち着きを取り戻し、十夜は更にニィッと笑った。 そして、十夜は翡翠石を背に歩き出す。   『―…気をつけてね…』   綺麗な透き通った女性の声が十夜の背に向かって言った。 それを聞いた十夜はぐるんっと勢いよく振り返り、   「行ってきまーす!!」 大きな、森全体に響き渡るほどの声で言った。         十六の少年、光の子。 深い森に見守られて…旅立った。   運命に身を委ねるように…  
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