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電車を降りると、雲で真っ黒になった空が広がっていた。
おかしいな。学校を出た時は晴れていたのに。女心と秋の空、とはよく言ったものだ。
「ひと雨来そうだな……」
降ってくる前に帰ろう。
僕は歩きだした。
改札とプラットホームをつなぐ連絡橋は、スーツ姿の会社員や制服姿の学生が行き来していた。僕と一緒に降りた乗客や、今から電車に乗る人たちだろう。
この町にもこんなに人が居たんだな。毎度の事ながらびっくりする。
片田舎の駅だけど、混む時は混む。
一応、新幹線の始発駅だし、駅前はそれなりに華やかだし。
そんな人混みの中を歩いていると、傘を持っている人がちらほらと見えはじめた。
ビニール傘だったり折りたたみ傘だったり、形は様々だけど、濡れているかは確認出来なかった。
(降ってなければいいけど)
階段を下り、改札を抜ける。
外を見ると、案の定雨が降っていた。
「あちゃー、降り出したか」
けっこう強い降りだ。
僕と同じように足止めをくらっている人も何人か居る。
(いけね、傘持ってきてねぇや)
鞄を漁っていて気付いた。この前使って、出しっぱなしだ。
(やれやれ……)
意を決して飛び出していく人もいたが、そんな気にはなれなかった。
制服が濡れるのは嫌だし、教科書が濡れるなんてもってのほかだ。
バスで帰る手もあるけど、歩いて帰れる距離なのに、わざわざ利用する事もない。
(早く止めばいいけど)
仕方ない。止むのを待つ事にした。
外では、ビラ配りをしている人たちも雨宿りをしている。
ロータリーでは路線バスが忙しなく動き回り、水しぶきを飛ばしていた。
雨に濡れたビル群も、いつもとは違う趣があった。
(そういえば)
ふと思い出される、一人の少女。
「あの日も、こんな雨の日だったっけ……」
僕は空を見上げた――。
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