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「可笑しくもないのに……笑えるわけがないだろう」
耳元で静かに囁やけば、帝は一瞬目を見開き、ギュッと俺の胸元を掴む。
「……緋月…………っやっぱり……変な奴だよお前は…………ほんと……変な奴」
そのまま、押し付けるように顔を胸に埋めてきた帝は、ほのかに身体を震わせていたが……
「……かもな」
俺は気づかなかったふりをし、帝が落ち着くまで身体を離しはしなかった。
しばらくすると帝の震えもおさまる。
内心名残り惜しいと思いながらも、ゆっくりと離れようとすれば、帝は掴んだ手を離そうとはしなかった。
―……どうかしたのか?
「帝?」
「…………」
不思議に思った俺は帝の頬に手をあて、顔を覗き込むようにして名を呼べば、帝は無言のままでその顔を上げた。
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