620人が本棚に入れています
本棚に追加
ボタンを外し始めても、帝は少しも抵抗しようとしない。
何もいわない帝に、自分でああ言いながらも気にかかり、俺は途中で手を止めた。
「……抵抗……しないのか?」
頬に手をのばし顔を覗き込めば、その顔を反らされる。
それと同時に帝はボソリと呟いた。
「“嫌なら”抵抗しろって言ったの……緋月じゃないか」
「……帝……」
赤くなった耳が、そのぶっきらぼうな態度が照れ隠しであることを物語る。
きっと、こんな姿を見たのも俺が初めてだろう。
そう思うと、自然に唇の端が吊り上がった。
「フッ……耳……赤いぞ?」
からかうように囁き、その耳を舐める。
「…………ッ……気のせいだよ」
「そうか?」
「…………そう」
顔では平然を装(よそお)うが、照れているのは隠しきれていない。
そんな姿がやけに可愛く思えたが、それを口に出して言うのはやめた。
基本は攻めである以上、そんなことを言われても、嬉しくなどないだろうからな……
.
最初のコメントを投稿しよう!