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「んん~っ……じっと寝てるフリするのも大変なものだねぇ」
腕を上にあげ、ぐっと伸びをする帝。
その姿は別段いつもと変わりがなく、俺の言ったことを聞いていたとは思えない。
だが、疑いようもなかった。
「いつから……起きていた……?」
平常心を装いながら、俺は抑揚の無い声で尋ねる。
他に聞かねばならないこともあるだろうに、このときの俺には、それを言うのが精一杯だった。
「ん~……緋月が俺の頭を撫でたあたりかな(ニコッ)」
「……そうか」
顔を見ていることも出来ず、目をそらす。
すると
『はぁ』というため息とともに、俺は両手で顔を挟まれ、強制的に帝の方へと向かされた。
「ずっと待ってたっていうのに……緋月、肝腎なことはなかなか言わないから……」
「……待ってた……?」
はっきり言って意味が分らなかった。
いったい俺の……何を待っていたというんだ……
肝腎なこととはなんなんだ……
次に発せられる言葉に再び驚かされるとは知る余地も無く、俺はただただ呆然と、真剣な表情の帝を見据えていた。
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