620人が本棚に入れています
本棚に追加
――――
「……き……づき……」
「……っ……」
誰かの声により、俺はハッとして閉じていた目を開いた。
だが、まだ頭は正常に働かず、何も考えることが出来ない。
仕方無しに、頭上に生い茂る木の葉を呆然と眺めていると、再びあの声が響いた。
「緋月!!」
今度ははっきりと、俺の名を呼ぶのがわかる。
―この声……
……下……か?
その声をたよりに下へと目をやると、そこでは、一人の男がこっちをジッと見据えていた。
風にさらりとなびく、漆黒の長い髪……
声でわかってはいたが、やはり間違いないようだ。
「……帝……」
その姿をとらえて体を起こすと、俺は直ぐさま木から飛び降りた。
.
最初のコメントを投稿しよう!