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私は、また下を向いてしまった加藤君に言った。
「彼の事は諦めるんだ。
そして、ヴァンパイアである事を隠して生きろ。
人間は殺すな。
彼はある組織によって罰せられたのだと思う。彼らは人間とヴァンパイアの世界のバランスを重視する。人間を殺したり、ヴァンパイアとして表舞台に立つことを許さない。 他にもルールがあるようだが、私はその組織に属していない為詳しくはしらない。
向こうから君に接触してくる事があるかもしれないが、今の君なら大丈夫だろう。
君は自分の為に生きろ。
困った時は力をかそう。」
彼女はしばらく黙っていたが「なんだか混乱してきた…今日は帰る…落ち着いたら連絡するわ。」
と言い、私の携帯番号を自分の携帯に登録してから店を出た。
読者諸君は、もっと他に言い方はなかったのか?と思うかもしれない。
しかし、彼女に嘘をつく事は私には出来ない。いずれ知る事になるからだ。おそらく近い内に組織の方から彼女に接触してくるだろう。
私が先に彼女に出会う事が出来て良かったと私は思っている。
もし私が後なら彼女はもう存在していなかったかもしれない。
自分が愛した男を殺した者達を目の前にして冷静でいられるとは思えない。
彼らは組織に逆らう者に対して容赦しない。
もし、彼女が彼等に襲いかかるような事になれば彼女は殺されてしまうだろう。ヴァンパイアも完全に不死身というわけではない。跡形もないほど引き裂かれ、焼かれてしまえば復活できなくなる。
しかし、まだ安心は出来ない。
彼女が彼の事をふっきる事ができるまで(いや、ふっきる事は出来ないだろう。彼との思い出は永遠に彼女を苦しめることになるのかもしれない。)安心は出来ない。
私は彼女の様子を時々見る事にして、レストランをでる事にした。
あ…まあいい、ここは彼女の分も私が払っておく事にしよう。
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