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本当に恐面のお姉さんだったらどうしようか、と悩みながら漲はここからの脱出方法について考えを巡らせる。
ドラ●エのダーク●ーンに合うときはどう進むんだったか…などと考えてから鼻で笑い、こんな時でも冷静でいられる自分をバカにしてみる。
ふと、漲の頬に何かの感触があった。
―――風だ…!
風が吹いている。つまり風が吹く方へ歩けば外に出ることが出来る。
漲の中に光が差した気がした。
早く、風が止まないうちに、早く行かなければ。
一面の暗闇にも関わらず漲の足取りはしっかりしていた。視覚が使えない代わりに発達した感触や嗅覚が漲に風の流れをはっきりと伝え、その進むべき道を漲に教える。
もうすぐ、もうすぐだ。
一面の黒に、一点の白い光が見えた。
その光は漲が動くたびに徐々に大きくなって、やがて視界の全てを白に染めた。
―…ん?―
あと一歩進めばここから出られる、というところで何処からか漲に語りかけるような声が聞こえた。
漲はその声の主から今の状況について聞こう、と、使えないはずの目で辺りを見回し声の主を探す。
だが当然ながら漲の目は何も映し出さず声だけが彼の中に響く形になる。
始めはぼそぼそとしていた声が徐々にはっきりと聞こえだし、それが小さな女の子が出すものなのだと予想が付いた。
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