腕とオタクと異世界と

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きっかけなんて些細なものだ。 何でもいい。 少しでもそういう方向へと傾ける何かがあれば、あとは自然に動いてしまうもの。 そして彼、沢渡漲(みなぎ)もまた、『変化』という天秤を傾ける些細なきっかけに出会ってしまった――――――……… ………―――――――――― 沢渡漲は平凡な高校3年生。趣味はバレーとテレビゲーム。特技は機械の修理と改造。将来は工学系に進もうと勉学に勤しむごくごく普通の受験生。 今日も学校帰りの楽しみ『電気街徘徊』で、作成中の自作パソコンに使う部品を物色しているところだった。 部員からオタク呼ばわりされようが、クラスの女子に『顔は良いのに…』と嘆かれようがそんな雑音を全て無視し、これが俺の楽しみだ!と一蹴するのが沢渡漲の日常。 余談ではあるが彼は決して美少女フィギュアを集めて鼻息を荒げるといった趣味はない。 あくまで情報機器や回路に興味があるだけだ。 電気屋によく出没しているというだけで周囲からオタク扱いを受ける漲はある意味苦労人といえるだろう…………… 全く近ごろの女共は……。頭の片隅で小さくため息を吐く。 そんな時、カートの中の機材を眺め、あとは何を買うか…と考える漲の視界に、ふと見慣れぬ物が飛び込んできた。
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