腕とオタクと異世界と

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「……何だアレ……人形…?」 店内の在庫を置くスペースに無造作に置かれた段ボール箱。その隙間から細長い黒い物が見えた。 「………………。」 何だか情操教育上、いろんな意味で『良くない』モノを目にした気がした。 白く細長い物体は程よい柔らかさと適度な芯の硬さを持ち、下に行くに連れ細く華奢になっていく。その先は小さなL字型に曲がっており、さらに半分を覆う黒い革製の、ブーツのようなものが付いていた。 つまりは、『脚』。 あの見事なライン、色艶の良い柔らかそうな物体に頭を乗せたらさぞ気持ちが良いだろう…………。 そこまで細かく描写した漲は少し恥ずかしくなり、またその想像の延長にある嫌な予感が的中しそうでこれ以上は考えたくなくなった。 このまま見なかったことにして買い物だけ済ませてしまおうかとも思ったのだが、漲の中の探求心がそれを許さず、目の前に転がっているそれが何なのかを説明付けて結論を出そうとしてしまう。 悲しきかな理系人間の性。 そして出てきた結論。 その物体は、よく見れば物ではなく人形。そして『人間』の足のようにも見えるということ………。… 自分の出した結論を反復し、漲の全身に氷が這ったような感覚が走る。
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