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「……やっぱマネキンだな。それより帰ってパソコン完成させないと…。母さん煩いからな…」
あえて見なかったことにして漲はその場から立ち去ろうとする。
変なことに頭を突っ込むのは漫画の中の主人公だけでいい。
そう言い聞かせてレジの方へと脚を進めようとするのだが、不運にもズボンの裾に『何か』が引っ掛かってしまい、そのまま顔面から床に激突。
「――ってぇな!誰だよこんなトコに変な腕おい……て…………、え?」
とっさに目に入ったものに声を荒げる漲。しかし、ふと自分で口にした言葉に疑問を持ち、恐る恐る引っ掛かった部分に目を落とす
………………増えてる。
そこには先程まであったブーツの他にもう一つ。
段ボール箱から伸びる一本の腕のようなものが漲の制服に引っ掛かっていた。
いや、引っ掛かっていたという表現は正しくない。それは先から伸びる5本のモノを器用に絡ませ、例えるなら正しく『掴んでいた』のだった。
黒い革製の手袋が先端にくっついている"ソレ"は、先程の『脚のようなもの』に付属しているゴツめのブーツとよく合う革製の手袋で、その角度や位置からしても丁度『腕』の位置から出ていた。
漲を少しの恐怖心が襲った。
ほんの数秒目を離した隙に出現した新たな物体。さすがのマネキンでもオートで客を掴んだりする訳が無い。
もしかしたら漲が知らないだけであって実は試作品があるとか、すでに実用の段階にあるのかもしれないのだが。
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