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「……あれ?」
必死になってそれを引っ張ろうとする漲はふと、思った。
店の一角で大声で叫び、人の腕を引っ張っている自分が人目につかないはずが無い。
漲は急に冷静になり辺りを見回す。
だがどこを見てもギャラリーどころか客が一人も居ないではないか。しかも店員すら居ない。
――人の気配が全く無い
漲に恐怖が走る。
それは先ほど脚を見つけた時に感じた『恐怖心』ではなく、全身の力が抜けていくような『恐怖』
そしてその瞬間、追い打ちをかけるように目の前の『人』が言い放つ
「今頃気付いたか……。しかしもう遅い…お前にはこちら側に来てもらう!!」
「っ?!」
先程までとは違うはっきりとした声。
何が起こっているのか漲には理解出来なかったがこれだけは分かった。
―――逃げないと!!
漲は恐怖によって抜けた力で必死にそれを振り払った。だが気付いた時にはもう遅く、段ボール箱から伸びる手が漲の腕を掴み、逆に漲を引き込もうとしている。
「うわぁぁああ!!離せ、離せよ!!」
引き込まれまいと全身の力を混めてそれを拒絶するが腕も足もビクともせず、徐々に漲はその中へと引き込まれていく。
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